親子とは

船本 夕里亜

毎日、暑いですね。
みなさま、くれぐれも体調管理には気をつけてお過ごしください。

さて、先週、父親と子どもの関係について、最高裁判所が重要な判断を示しました。

DNA型鑑定で血縁関係がないと判明した場合に、法律上の父子関係を無効にできるかどうかが争われた裁判で、最高裁は、親子関係を取り消すことはできないとしたのです。

父子関係について、民法は、「妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する」(嫡出推定。772条1項)と定めています。その趣旨は、子としての身分の安定性の確保にあると考えられています。そして、「夫は、子が嫡出であることを否認できる」(嫡出否認。774条)ともしています。

嫡出推定を覆すためには、原則として嫡出否認による必要があり、否認権者や期間などが制限されています。血縁上親子関係がないとしても、一定の期間の経過等によって、親子関係を否定できなくなるのです。つまり、民法は、血縁関係がないというだけでは覆せない親子関係を規定していると理解できます。

DNA型鑑定により、血縁関係がないと判明した場合に、父子関係を否定できるとすると、この嫡出推定が機能しないことになります。というのも、いつでも誰でも父子関係を否定できることになり、鑑定などをしない限り、婚姻している女性が産んだ子について父親が決まらないという事態になるからです。

最高裁は、嫡出推定について、「子の身分の法的安定性を保持するのに合理的」と指摘し、「法律上の父子関係と生物学上の父子関係が一致しないこともあるが、民法は容認している」と結論づけました。

親子関係において血縁が重要な意味を持つことも分かりますが、血縁のみが親子関係を基礎付けるものではないようにも思います。

もっとも、5人の裁判官のうち2人は生物学上の父との間で新たに法的な親子関係を確保できる状態にあるなら、父との関係を取り消すことを認めるべきだとの反対意見を述べています。
生殖補助医療も発展しており、親子関係については、今後も議論を要するところですが、子の幸せや福祉に十分配慮したものでなければならないと思います。

前のページへ戻る