よけいな言葉はいらない?!~婚外子相続差別違憲事件~

下宮 憲二

こんにちは、下宮です。

 少し前のことになりますが、婚姻関係にない前パートナーとの間に生まれた子(婚外子)の相続分が、婚姻関係にある現パートナーとの間に生まれた子(嫡出子)の2分の1となる民法の規定について、最高裁判所で違憲判断がなされました。これまでの当該規定に対する合憲判断においても反対意見が多かった事案であったことから、どのような判断がなされるか注目されていました。
 
 私が学生だった頃においても、授業で当該規定が合理的なものかどうか議論がなされていました。生まれてくる子にとっては、自分にはどうしようもないことで差別されるとあって不合理なものであるとの意見が多数だったように思います。
ただ、当時、当該規定を合憲とする意見の中には、本来婚外子には相続分が認められないのであるが、当該規定は嫡出子の半分の相続分を与えることによって、むしろ婚外子を保護している規定なのだというものもあり、家制度を重視する見解からは、そんな考え方も出来るのかと感心したのを覚えています。

今回の判断で特に言及されたのが、すでに決着済みの事案にはこの判断は影響を及ぼさないとした点です。
今回の判断によると、平成13年の時点では、法定相続分を区別する合理的根拠は失われていたとされています。とすると、平成13年以降においては、2分の1とする規定は違憲状態だったのであり、効力がなくなっていたのではないかと思うのです。
しかし、違憲判断がなされていない以上、2分の1とする規定が有効であると信じて、遺産分割協議等がなされていたとすれば、合意は錯誤によりなされたもので無効だと主張出来そうです。
この錯誤無効の主張をさせないようにするために、「影響は及ぼさない」と釘を刺したと思われますが、今後相続分が平等となった場合との不公平感は否めないのではないでしょうか。

やはり真の平等のためにはよけいな言葉はいらなかったのかもしれませんね。

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