「最後の一球」にかける「男気」~黒田博樹投手復帰会見~

蓮見 和章

こんにちは、代表弁護士の蓮見です。

さて、昨日、広島では地元カープに8年ぶりに復帰した黒田博樹投手の復帰会見が行われました。全国的にも大きなニュースになったと思いますが、広島では民放4社のうち3社が特番を組み生中継で会見の模様を伝えるなど、本当に一大イベントになりましたね。

会見には本当に心が揺さぶられましたね!!

「男気」

黒田投手の代名詞であるその言葉からすると、一見して威勢がよく、自信に満ち溢れて強気なことをいうようなイメージを勝手に持ってしまっていました。「この日を待っていました!」「カープファン大好きです。」「カープを優勝させます!!」そんなことをさらりといっちゃたりするととなんかかっこいいなあ。漠然とそう思っていました。

しかし、昨日の会見はまったく逆でしたね。

「(戻ってきて)不安しかないです。」
「(カープで)どこまでできるか分からない。」
「(決断するまで)今回ほど悩んだことはなかった。一秒ごとに考えが変わる時期もあった。」

 至って謙虚で真摯な受け答えでした。決して飾らず、自分自身と向き合ってきた気持ちを自分の言葉で話していたのがとても印象的でした。

「男気」
 

辞書によれば、「弱い者が苦しんでいる様を見逃せない気性」を指すようです。

とすれば、黒田投手がカープを見逃せずに高額なオファーを断り帰ってきた。その気概が今回の「男気」でしょうか。

 もちろん、その行動自体は素晴らしいことです。しかし、私は、そこを「男気」というのは、少し違うのではと感じました。

 8年前に広島を去る時に彼が語った言葉
 「日本に戻るならカープで!」

 昨日の会見を見る限り、その言葉自体も、彼は決してリップサービスではなく、当時自分自身と向き合った結果として、素直に発していたのだと思います。だからこそ、その言葉に恥じない成績を残さなければならないと思い続け、「苦しかった」メジャーでも安定した活躍ができたのだと思います。

 そんな素直な言葉で彩られた昨日の会見の中で、僕が一番心打たれた言葉があります。

「いつ最後の一球、最後の登板になってもいい。そういう気持ちでやってきたので、その一球のためにどれだけ気持ちを込めて投げられるかと考えた時に、日本でカープのユニホームを着て投げる方が、最後の一球になったとしても後悔は少ないんじゃないかと、自分自身で判断しました」

 何度聞いても泣けますね!!

 
 もちろん口にするのは簡単です。でも、黒田投手が話すと、これまで一球一球にどれだけの想いをこめてやっていたのかというのが、伝わってきます。また、そう思わせるカープやカープファンが素晴らしいことも間違いありません。
 
 カープのために、カープファンのためにというより、
「自分自身が好きなカープで最後の一球を投げたい!!」

 先のことをあまり考えすぎずに、自分に正直に今をしっかり生きていく。そして、その時の気持ちや感謝を愚直にそして素直に周りに話せる。

 
 「男気」ってそういうことなのではないでしょうか。

 誰かのためにというのは、その結果であって、目的ではない。

 そういえば、私の周りで輝いている人、「男気ある」と言われている人は皆基本的にはこのスタンスで生きているように思います。

 自分に正直で、今をしっかり生きているんです。だからこそ自然と周囲にも感謝していて、素直なんです。そして、そういう方の行動って図らずも周囲のためになっているんですよね。

これって簡単そうに見えてかなり難しいですよね。どうしたって、将来や過去を引きずりますし、自分に素直でいてかつ周囲に変に媚びたりしないのもなかなか難しいと思います。

 まあそれにしても、冒頭で話した会見前の私のイメージは黒田投手に対してとても失礼だし、こういえばかっこいいのにと考えていた自分は「男気」とはほど遠い未熟な男だなあと思ってしまいました。

 一応、私は、黒田投手と同じ身長で体重もほぼ同じなので、体格は似ていると思うのですが・・・・・男としての器の大きさが違いすぎますね。
 
 まだまだ修行が必要です。

 弁護士は「法律を使って弱者を助ける」仕事をするといわれることがありますが、まずは、自分自身が真の「男気」を身につけなければ、依頼者の立場にたった弁護はできないなあと思っています。そこは素直に(笑)受け止めたいと思います。

 さて、黒田投手は会見で今シーズンへの意気込みをこう述べていました。

 「毎試合この一球が最後だと思って常にマウンドに立っていたい。」

 
 そんな「男気」ピッチングがズムスタで見られるなんて、広島のカープファンはやっぱり幸せものですね。

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