「みずほ」「さくら」は「新幹線」か?

蓮見 和章

 こんにちは、広島事務所の蓮見です。

 皆さん、明後日3月12日に九州新幹線「みずほ」「さくら」が全線開通するのをご存じでしょうか。九州新幹線はすでに鹿児島中央~新八代間では部分開通していましたが、この度新八代~博多間も開通し、山陽新幹線との相互乗り入れにより広島から熊本まで1時間37分、鹿児島まで2時間23分で到着することになります。アクティブイノベーショングループでは、全国の皆様に広くリーガルサービスを提供することをモットーにしておりますので、九州を短時間で縦断できるようになることは業務の上でも有用です。もちろん、鹿児島には黒豚や薩摩揚げ、熊本には馬刺しなど美味しい料理がありますし、九州南部はプロ野球やJリーグのキャンプが多数行われる地でもありますので、個人的にも「みずほ」「さくら」に乗る機会は多くなるのではと非常に楽しみにしています。

 ところで、皆さんは新幹線と在来線の違いはどこにあるかご存じでしょうか。「新幹線って呼ばれているものが新幹線、それ以外は在来線でいいじゃないか」、とお思いの方もいらっしゃるかと思いますが、今回はちょっとまじめに法律的な面から「新幹線」を考えてみたいと思います。

 そもそも、新幹線という言葉が初めてでてきたのは昭和39年に東京オリンピック開催に合わせて開業した東海道新幹線設置の時です。この時は、新幹線は「東京と大阪府とを連絡する日本国有鉄道の幹線鉄道」(改正前の新幹線特例法)とされていました。つまり、新幹線=東海道新幹線という固有名詞だったのです。その後この東海道新幹線は、その利便性、高速性、安全性が高く評価されるようになり、似たようなものを全国に設置するべきではないかという動きがでてきて、次第に「新幹線」が広く一般名詞として使われるようになったのです。 
 このような動きの中で全国新幹線鉄道整備法という法律が昭和45年に定められ、初めて「新幹線は何か」という定義がされました。

全国新幹線鉄道整備法第2条
この法律において「新幹線鉄道」とはその主たる区間を列車が二百キロメートル毎時以上の高速度で走行できる幹線鉄道をいう。

 つまり、「新幹線」とは200キロ以上で走ることができる鉄道であり、それ以下で走るものは「新幹線」ではないということになります。さらにこの新幹線鉄道整備法では「新幹線」の路線計画は、国土交通省が個別に基本計画を定め現地調査し、整備計画を決定する必要があるとされています。これは、200キロ以上で走行する「新幹線」の路線は、安全に走行させるために軌道の幅を広げ車両の重心を低くしなければなりませんし、出来る限り勾配をなくしまっすぐなものしなければならないため、その条件等を満たすように国が直接計画をする必要があるとの考えから規定されているものです。

 以上からすれば、法律上の「新幹線」とは、200キロ以上で走ることができる鉄道であり、国土交通省が路線について基本計画、整備計画を個別に定めて設置されるものと言うことができるでしょう。
 しかし、このような定義付けをしていくと、実は一般には新幹線と呼ばれていても、法律上は「新幹線」ではなく、在来線となる路線が存在することがわかりました。

・・・山形新幹線「つばさ」(福島~新庄間)、秋田新幹線「こまち」(盛岡~秋田間)。

 残念ながらこの二つの新幹線は、法律上は「新幹線」ではありません。「そんなはずはない。」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、この二つの新幹線は当該区間では実際200キロ以上で走行しておりませんし、在来線の線路を利用して運行しているので、法律上の「新幹線」で無いことは明らかなのです。
 ちなみに九州新幹線「みずほ」「さくら」は200キロ以上で走行し、しっかりと新幹線鉄道整備法に基づき路線計画が定めら設置されていますので法律上の「新幹線」にあたります。また、今後設置が予定されているリニアモーターカーも当然200キロ以上で走行しますし、基本計画までは定められているので、あとは整備計画が定まれば「新幹線」ということになります。

 ただ、法律は時代により変わります。技術が進歩すれば、法律上の「新幹線」の定義も変わるかも知れません。子供達に夢を与え、鉄道ファンにロマンを与え、ビジネスマンにビジネスチャンスを与える「新幹線」、今後法律上どのように変わっていくのかも興味があるところです。

 『「新幹線」は時速1000キロ以上で走行するものですので、「みずほ」は「新幹線」ではありません・・。法律上「旧幹線」になります。』
 
 なんていう日が来るのかなあと思いつつ、明後日の全線開通を楽しみにしたいと思います。

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