行列のできる某力団事務所(SS氏引退報道)

下宮 憲二

こんにちは、広島事務所の下宮憲二です。

 SSさんが芸能界を引退するというニュース速報をテレビで見た時、SSさんのマスコミに対する影響力の大きさをまざまざと感じました。と同時に、B団関係者とメールのやりとりを過去に4、5回していたことが引退の原因と報じられたことに非常に厳しい世界なんだなぁとも思いました。
 私は、大学時代から関西にいましたので連日のようにテレビに登場するSSさんを見ていました。モノマネや一発芸の芸人さんが多い中で、出演者との間でのトークで次から次へと話を展開させ、切り返しの速さや絶妙な例えで(よく「野球で言うーたら、9回裏ツーアウトランナー無しの場面やぁ」等例えられていたと思います)会場を沸かせていた記憶があります。「クイズSくん」などでは、クイズ番組であるにも関わらずSSさんのトークが冴えわたりクイズが一度もなされないまま番組が終わっていたことがあったのを覚えています。その頃は、場の雰囲気をつかみ頭の回転が速く瞬時に対応するすごい人だなぁと思っていました。それだけに、SSさんのトークが聞けなくなるのは残念です。

 B団関係者とメールのやりとりをしたこと自体は、法律に触れるものではありませんが、所属事務所との契約の中で、B団関係者とは一切関わらないとの条項がありこれに違反したのであれば契約上の責任を負う場合があると思います。
 今回は社会的責任を取って引退するということですので法的問題とは別ということなのでしょうが、会見を聞いていると過去に解決できないトラブルがあってそれで悩んでいるときに紹介してもらったB団関係者のおかげで問題が解決して、それ以来恩義を感じていたとのことです。暴対法(暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律)10条は、一般の人であっても、指定暴力団員に対し、不当要求行為を要求・依頼等することを禁止していますので依頼内容によってはこれに反することになる可能性があり、社会的責任だけにとどまらないかもしれません。
 ですので、問題なのは、知り合いにB団関係者がいてメールでのやりとりをしたことではなく、B団の威力を利用して不当要求行為類似の依頼をしたことのほうが問題なのではないかと思います。

 SSさんは軽い処分で終わらせたら後輩への示しがつかないのであえて引退という重い処分を選んだ旨会見されていましたが、そうであるならばむしろ引退よりも真実を包み隠さず明らかにしてもらったほうが今後のためになる気がします。
 会見では、すべて正直にしゃべろうと思っていると言われ、手紙を送ったとか写真があるとかの存在は強く否定されていましたが、翌日に直筆の手紙や一緒に撮った写真の存在が捜査関係者により明らかになってしまいました。
 これは、本人にとって非常にかっこ悪いことになってしまったと思いますが、なぜこのような情報がマスコミに流れたのでしょうか。
2005年に大阪府警がB団関係者宅を家宅捜索した時に写真や手紙を発見していたそうですが、そもそも、その写真は捜査の対象にする必要があったのでしょうか。捜査対象であったとしても、このような捜査情報が現時点でいとも簡単にマスコミに流れていることについては問題があると思います。中国漁船が海上保安庁の巡視艇に衝突した時の映像が流失した時には、非常に問題視され職員が処分されました。今回の情報も捜査機関が捜査上知り得た情報であるはずですが同じ問題は起きないのでしょうか。以前、大相撲の八百長問題時にも指摘しましたが、捜査情報が刑事責任追及以外で利用されていることに再び違和感を覚えます。

 といろいろな問題を含む今回の報道ですが、今回の件で一番感じたのは、法律の不完全さです。SSさんの悩みが法律では解決の困難な性質のものだったのではないでしょうか。最強の弁護士軍団と仕事上関係のあるSSさんの悩みが法律によって解決出来ていれば、B団関係者を頼ることもなかったのではないかと思います。
 その意味で、行例のできる法律相談所においてしっかりとした対応が出来なければ「行列のできる某力団事務所」が出来てしまうかもしれませんね。

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