監督に求められる者

蓮見 和章

 こんにちは広島事務所の蓮見です。

 今日は、プロ野球で中日の連覇と埼玉西武のCS進出が決定しましたね。埼玉西武は最下位に沈んでいたこともありましたが、土壇場でオリックスをわずかにかわしてのCS進出、正に奇跡です。私は埼玉出身ですが特に西武ファンというわけではありません。ただ、この奇跡はこの日新たに埼玉県民となった「あらちゃん」が県民へのプレゼントとしてもたらしてくれたものではないかと思います。Jリーグでも埼玉県の2チームが降格争いをしていますが、「あらちゃん」はどちらのチームにほほえんでくれるのでしょうか。私としてはとても気になります。

 そんなプロ野球やJリーグですが、シーズンも終盤になり現監督の辞任や解任、新監督の就任発表などのニュースが耐えません。ファンからすると今の段階で来年の話しをされるとしらけるということもあるでしょうが、公表するかは別としてチームとして早期に来年を見据えることは大事なことです。いや、本当に・・。

 ところで、プロ野球やJリーグの監督には誰でもなれるものなのでしょうか。それとも、なるためには資格(ライセンス)のようなものが必要になってくるのでしょうか。

 結論からいうと、プロ野球は特に監督の資格に問題はない、つまり誰でもなれるのですが、Jリーグの監督は一定の資格(要件)が必要になります。

 Jリーグ規約第113条ではJリーグのトップチームの監督は、協会がS級ライセンスを取得した者に限ると規定しています。S級ライセンスとは、日本サッカー協会が公認する指導者の免許制度で最高位の指導者資格のことで、取得するには一定の経験等が必要になります。Jリーグ規約では、例外として、海外でS級ライセンスと同等以上の資格を有していると認められる場合にもJリーグの監督になれる規定もありますが、少なくともサッカー界において指導者として一定の経験があることが必要になってきます。サッカーに詳しい方なら、現名古屋監督のストイコビッチが、就任時にこの資格問題で引っかかり、一度就任交渉が暗礁に乗り上げたことは記憶に新しいと思います。

 また、Jリーグ規約第117条では、プロ野球の古田監督に見られたような監督の選手兼務が禁止されています。個人的にはストイコビッチ監督が「選手交代、フリーキッカー俺!」といってゴールを決める姿を見てみたいのですが、それもかなわぬ夢なのです。

 このようにJリーグとプロ野球は監督という職業に関する規定が大きく異なるのですが、どうしてそのような違いが生じたのでしょうか。そこには関係者の既得権益等の政治的な違いもあると思いますが、個人的には監督品位の維持に対する各団体の考え方の違いがあるように感じます。

 弁護士もそうですが、職業に一定の資格を求める理由は、その職業を遂行できる能力を資格で担保し、その職業全体の品位(あるいはその職業のサービス内容)を維持しようとしているところにあると思います。Jリーグでは監督の品位を汚さない(クラブの戦力充実によりJリーグの試合内容を充実させたい)ために、監督に一定の資格を求めている側面があるように思います。

 それに対してプロ野球が監督に資格を設けていないのは、特段資格を設けなくても、プロ野球では監督に相応しい(と思える)人材でなければ監督になれないという市場原理が確立されているという考えがあるからだと思います。逆に資格がなければ監督になれないとすると、市場原理で監督に相応しいと認められても監督になれなくなってしまい、有能な芽をつんでしまうことにもなりかねません。選手兼監督が認めらなければ、ノムさん(選手兼監督として8年監督をし、監督を解任された後も選手として2年間活躍)のような名監督は生まれなかったかもしれないのです。

 個人的には、Jリーグも発足20年になり、監督になるための市場原理はできてきているように思います。

 結局のところ、各チームは資格(ライセンス)があろうがなかろうが、チームを優勝へと導いてくれる人を求めているのであって、極論を言えばS級ライセンスを持っているけどチームをJ2へと降格させてしまう監督より(もちろん、それでもチームに戦い方を植え付け、若手を育てているという意味で評価されるべき監督もいますが)、経験値がなくてもストイコビッチのようなチーム愛と情熱とカリスマ性をもってチームを導く監督の方が優秀だと思います。また、カズのような現役選手から慕われるようなベテラン選手が監督兼任になった方が、チームの危機にチームを一丸となる方向に導き、サポーターからの人気もでるようなこともあると思います。その意味では、Jリーグも監督制限を無くしてみたら面白いのではと、無責任ですが思ってしまう今日この頃です。

 ちなみに、ストイコビッチは選手として名古屋に在籍していた1998年にユーゴ代表としてW杯に出場していますが、そのW杯で同じくJリーグのクラブに所属しながらユーゴ代表のスタメンに名を連ね、ストイコビッチと同じく所属クラブを愛してやまない情熱的な人柄が評価されて現在古巣のJのクラブを率いている監督がいます。ストイコビッチと酷似した経歴を持つ彼の監督としての評価はまた後日にしたいと思います。

前のページへ戻る