物言う賃借人のすすめ?(賃貸借契約締結にあたり)

下宮 憲二

こんにちは、広島事務所の下宮憲二です。

 最近、自宅にベンチプレス台を置きたくて、引越しを考えるようになりました。それで、広島市内をいろいろと歩き周っているのですが、静かで、環境が良くて、内装はきれいで、設備が充実していて、交通の便がよくて、それでいて筋トレを気持ちよく行える部屋、なんて言っていたらはるかに予算オーバーな物件しかありませんでした。
 それでも、予算の範囲内でいろいろな点を妥協しながら探していると、これはいいぁと思う物件を見つけました。そこで、賃貸借契約書を見て思ったのが今日のお題です。

 通常、賃貸借契約書は、貸主の方が定型的なものを用意しています。賃料や敷金の額、契約期間などについては交渉の余地があり、その点についてやりとりされることはよくあることだと思います。
 しかし、その他の点について契約書をしっかりと把握してから契約される方はどれくらいおられるでしょうか。
 例えば、賃貸借契約終了後敷金返還請求がどのようになるのか。これは、契約書によりまちまちとなっています。ある契約書では、単に賃借人の債務が存在する場合にはそれらの債務を差し引いた額を返還すると漠然と書いてあったり、減価償却分を差し引くとあったり、原状回復費用を差し引くとあったりします。この原状回復費用についても、賃貸借期間の如何を問わずクロスは全部張替するとか、賃貸人の指定するクリーニング業者による清掃費用は原状回復費用に含むなどとあったりします。
 原状回復費用については、よく争いになります。賃借人が通常利用する範囲で生じるような損耗は、本来、賃借人が負担する筋合いのものではありません。例えば、タンスを置いていたので畳の色が変わってしまった場合や、敷居などにキズなどが残った場合などです。クロスに関しても、日常生活をしていればだんだんと汚れてくるのは当然で通常損耗の範囲に入ると言われています。部屋の掃除などは、常識の範囲で掃除をして明け渡せばよく、クリーニング業者に頼んで掃除をする場合などは、賃貸人が負担すべきものと言えます。
 ですから、賃借人としては、通常の生活をしていれば賃貸借終了時に、負担すべき原状回復費用などないのが普通で、家賃の滞納などなければ契約時に交付した敷金はほぼ返還されるべきものと言えます。
 しかし、実際はそのようになっていません。様々な原状回復工事がなされ返還されるのはわずかな金額しかない、下手をすれば原状回復費用が不足するので不足金を請求されかねないこともあります。

 私が担当した事案では、ある店舗の明渡しに関して敷金を数百万円も超える請求がなされていました。大手業者の見積もりは、回復工事として地下埋設物の撤去、元々あった天井の撤去等、まったく関係のない項目まであってあきれました。それほど、原状回復というものはブラックボックス状態になっている場合があり、どれほどの原状回復が解約時になされるのか、事前に明確にしておく必要があります。

 とはいえ、契約となると賃貸人から定型的な契約書が用意されています。賃貸人が用意する以上賃貸人にとっては不利益とはならないように出来ています。それに対して、契約内容を変更して欲しいと言えるでしょうか。借りたい部屋が他にもいくつかあるのであれば、契約内容にあまり不利益のない物件を選ぶこともできるでしょう。
 しかし、お気に入りの物件がひとつだとしたら、契約内容変更を申し出た時点で文句あるなら借りてもらわなくて結構、なんて事態を考えてしまいます。そうすると、借り手の側には修正の余地などないと言う事になってしまいます。他にいい物件があってもまた同じような内容となっているのであれば選択の余地などありません。解約時に争うことが前提となります。

 このような場合、契約文言の変更までは求めることが出来ないとしても、どのような費用が敷金から控除されるのか、通常ならどれくらいの額が控除されるのかを契約時に確認するといったことだけでも最低限しておくことが必要ではないでしょうか。

 せっかく、物言う賃借人となって争いを防止しようとしても、そもそも賃借人になれないのであれば、何のために物言うのか分からなくなってしまいそうですね。

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