沖縄マラソンと高校駅伝

蓮見 和章

 こんにちは、広島事務所の蓮見です。

 プライベートな話しですが、先日、沖縄マラソンでフルマラソンを走ってきました。沖縄マラソンは、今年20回目。昨今のマラソンブームに便乗して誕生したわけではない歴史のあるマラソン大会です。

 私は、今回が3回目のフルマラソン挑戦になります。「フルマラソンを走っています」と言うと、よく「よほど走るのが好きなんだねえ。」とか「いつも黙々とトレーニングをしているんでしょう。」と言われますが、元来私は走ることが好きではありませんし、いつも黙々とトレーニングをしていれば、もうちょっとスリムな体型になっているはずです。

 そんな走ることが格別好きではない私が、何故マラソン大会に出場しているのか。友人からの誘いがあったことや完走し終えた後のビールが格段にうまいということもありますが、普段走れない場所を走れる楽しさがあるということは、私がエントリーする大きな理由の一つです。

 今回参加した沖縄マラソンのコースでは、米軍の嘉手納基地の内部を約2キロほど走るのが特徴でした。ちょうど、30キロ付近に差し掛かり足もまともに動かなくなってきたところであらわれる嘉手納基地。普段はテレビでしか観ることのできないその景色は、正に異国でした。声援が英語に変わり、気さくに食べ物や水をくれ、陽気な歌を歌いながら応援してくれる沿道の米国軍人やその家族にハイタッチで元気をもらうと、何故か不思議と足が軽くなり、気付けばラップタイムも大幅に短縮されていました。

 ちなみに、日米地位協定により、米軍基地内では日本の法律が適用されません。米兵が刑事事件を犯した際の不合理な処遇が、昨今の基地問題の一因ともなっていることは、法律家としてしっかり考えていかなければならない問題です。ただ、実際に基地を走ってみると、基地内にいる一人一人はあくまで一人の人間であって、その人達に対する評価と政治問題を一括り考えてはいけないという当たり前のことを改めて感じることができました。

 さて、このように走ることは好きではないがマラソンにはまりかけている私、広島弁護士会内でもそのことが少しずつ有名になり、3月に開催されるマツダ駅伝に広島弁護士会のチームの一因として参加することになりました。マツダ駅伝は、広島に本社のあるマツダの会社内で行われる、広島のランナー間では結構有名なレースです。一般人は普段中に入ることの出来ないマツダ社内を走れる訳ですから、私としても是非出てみたいレースの一つです。といっても駅伝はチームスポーツ、迷惑をかける訳にはいきませんから今回はそれなりに練習をしたいと思います。

 駅伝といえば、先日より宮城県の駅伝強豪校の部員男女10名が愛知県の駅伝強豪校に一斉転校するというニュースが話題となっています。話題の本質は、全国高校体育連盟(高体連)は主催するインターハイ等の大会で「転校後6ヶ月未満のもの」の参加を原則として禁止していて、震災地等からの避難のようなやむを得ない場合に限り特例として参加を認めてきたところ、被災地である宮城県からの今回の転校にもこの特例が認められるのかという点にあります。この特例が認められないと、転校した部員は夏に行われるインターハイに出られないことになります。

 本件では、確かに転校部員は被災地である宮城県の高校の部員であり、震災により練習環境が大きく変わってしまったのは事実だと思います。一方で被災後約1年間は一応それなりに練習をしてきていると思われることや(冬の全国高校駅伝ではそれなりの成績を収めている)、転校の背景には監督の移動(監督自身が愛知県の強豪校の監督に就任するのではという報道もあるようです。)も影響していること等からすれば、本当に震災を理由転校したのかと疑問に思う人がいるのも納得できます。高体連の判断はそういった様々な事情をふまえたうえでの総合的な判断になるでしょうから、なかなか難しい判断になりそうです。

この点に関して、強豪校から強豪校への一斉転校の場合に特例が認められるのかという点を中心とした議論を展開する報道も一部あるようですが、個人的にはこの報道にはやや違和感を覚えます。

確かに今回の一斉転校の可否に関しては、高校スポーツ界のあるべき姿として大いに議論されるべきだと思います。特に現場レベルで議論をしていかないと、全国大会出場を目指し日々練習をしている他の高校の部員のモチベーションの低下にもつながり、ひいては高体連設立の目的であるスポーツを通じた人間育成にも影響が出かねません。

しかし、転校した部員に対して特例が認められるかは、あくまでそれぞれの部員毎に個別具体的に判断されるべきです。その部員の家庭の状況や、愛知県の学校に転校する理由等を調査して、特例の可否を検討されなければなりません。極端な話、1人だったら特例を認められたのに、他の9人も一緒だからだめだよという判断がなされるのであれば、その判断はその部員の大会に参加する権利を不当に制限してしまっていると言わざるを得ないのです。

実質2年半程度の高校スポーツ生活における半年の出場制限は、その部員のスポーツ人生に大きな影響をあたえると思います。一斉転校といっても部員一人一人は、あくまで一人の部員です。どのような判断をするにせよ、高体連には「一斉」「集団」という言葉で一括りにせず、その部員特有の事情をくみ取った判断をしてもらいたいと思います。

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