思わぬ師弟対決(無料法律相談会)

下宮 憲二

こんにちは、広島事務所の下宮憲二です。

 「無料法律相談会開催!」と最近はこんな法律事務所の広告が増えたのではないでしょうか。私が、修習生だった頃、地方の法律家の間では法律事務所が大々的に広告を行うことはいかがなものかという空気がありました。これは、弁護士職務基本規定第9条2項に「 弁護士は、品位を損なう広告又は宣伝をしてはならない。」とあるためです。新聞広告をすることがこれにあたるのか、テレビCMはどうかということが問題となってきます。品位を損なうかどうかという判断基準はあいまいなものであり、受け手の感じ方に影響される面もあって何が品位を損なう広告かはっきりと分からないように思います。当時は、大都市圏では電車の吊り革などにも法律事務所が広告を出していましたが、広島ではまだまだ派手に宣伝することについては抵抗があったように思います。

 そんな中、我が広島事務所では法律セミナー&無料法律相談会を現在広島県内で開催しています。このセミナーの開催にあたっては広く新聞広告を行ったり、地元テレビの情報番組で告知して頂いたりしています。

 当初は、開催される直前まで誰にも来場して頂けないんじゃないかと思ったこともありました。相川弁護士の大好きなアイドルグループも、かつては観客のいないステージで歌ったことがあったとかなかったとか。幸い、セミナーが始まる頃には多くの方にお越し頂いていますので、ついつい力が入って予定時間を越えてしゃべってしまうこともしばしばです。

 法律セミナーを行う目的は、ご相談頂いて事件を依頼して頂くということもありますが、法律をもっと身近に感じて頂き、弁護士の敷居を取り払うことも重要なものとなっています。こういった、法律セミナーを広島で行っているのは私達の事務所くらいなのでいろんなところに出掛けてどんどん法律を知ってもらおうと意気込んでいました。

 しかし、先日思わぬ事態が生じたのです。ある街での開催日当日、会場へ行って受付を行ったところ、同じ日に、しかも私達の会場のとなりの会議室を使って無料法律相談が開催されることが判明しました。同じ日の同じ場所で法律相談が開催されると聞いて何か挑戦状を突きつけられたような思いがしました。そこで、無料法律相談をしているなら私も相談を聞いてもらおうと、乗り込んでいったのです。

 「すいませーん。相談したいんですけど。無料法律相談をしている会場の隣で他の事務所が無料法律相談をするっていうのは法律上問題がないんですか?」と私。
とある弁護士「え??そんな相談って!?あーー!!あんたぁ、ここで何しとるん?」

 なんとその先生は、私が修習生時代に弁護修習で指導担当をして頂き、私の法的センスを矯正して頂いた恩師でした。聞けば、広告を利用して定期的に無料法律相談会を開催されているとのこと。お互いの法律相談会が期せずして同じ日に開催されたのでした。その日は、恩師への恩返しとばかりにセミナーに来て頂いた方が私どもの法律相談会へ全員出席して頂けるよう熱のこもった講演となったことは言うまでもありません。おかげさまで、当事務所の弁護士がへとへとになるほど朝から夕方まで多数の方に相談して頂くことが出来ました。

 私が修習生の頃は、広告などもってのほかという雰囲気だったものが、ベテランの先生方までいろいろと今後の弁護士のあり方を考えて行動されていることに時代の変化のスピードを感じざるを得ません。もともと、私の恩師が非常に気さくでバランス感覚に富んだ先生ということもあると思いますが。

 法律家の敷居を下げて、みなさんに法律を身近に感じて頂くためにも、この師弟対決はなかなか決着がつかないかもしれませんね。

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