大事件!!お役所的ビフォーアフター(福山ホテル火災事件)

下宮 憲二

こんにちは、広島事務所の下宮憲二です。

 少し前のことになりますが、私の出身地である広島県福山市での事件が全国的なニュースになりました。未だ地元紙では連日のように福山ホテル火災として記事が掲載されています。良いニュースでなく残念です。

 事件直後、福山のプリンスホテルが火事になったみたいよと人づてに聞いたので、高級ホテルが大変なことになったなぁ、あれ?福山にプリンスホテルなんてあったかなぁと思っていましたが、後にホテル「Pリンス」というホテルであることが判明しました。

 残念なことに7人の方が犠牲になってしまいました。これまで、ホテルの経営者の方は入院中を理由に表には出ず、Oか山弁護士会の方が代理人を務めているようです。福山にも広島弁護士会の会員はいらっしゃるのですが。

 報道当初、違和感を感じたのは被害者の方々の名前等が明らかにされなかったことです。「広島県在住の男性」などと非常に曖昧な報道に終始していました。その後、判明したことですが、ホテル「Pリンス」は高度のプライバシーが保障される必要のある施設とのことでした。

 それで、逆に考えたのですが通常の事件で被害者の方の氏名や年齢が公表される理由というのはどこにあるのかということです。例えば、家族や職場に内緒で旅行に出ていて、事故に遭って名前が報道された場合、プライバシー侵害を理由に報道機関を訴えることが出来るのでしょうか。

 報道機関は、多くの場合警察からの発表をもとに報道していると思われます。とすると、報道機関は公開された情報を正当な業務のために公表していることになるため、報道機関の行為には違法性はないと思われます。

 では、警察は何故公表するのか。警察の広報活動の一環としてなされているということですが正確なところはどうなんでしょうか。

 ただ、今回は非公表とした理由を「特殊な場所での火災なので、亡くなった方のプライバシー保護の観点から」と説明しているとのことです。穿った見方をすれば、少し前に京都府において児童の列に車が突っ込んだ事件で、被害者の方の個人情報に関して不適切な扱いがなされた事件がありましたので、今回は敏感に反応したのかなぁと思いました。

 この事件、民事上の責任は当然ですが、今後経営者に対する刑事責任が追及されるのかに注目が集まりそうです。

 しかし、それ以上に、福山市がホテルPリンスにおける消防法や建築基準法に定める防火設備等の不備を長年気付かず、使用禁止などの適切な措置を取らずにいたことがクローズアップされています。

 このホテル、風営法の適用を受けるホテルだったようで、現在は、このホテルのある地域に風営法の適用のあるホテルを新たに建てることはできないようです。ホテルを取り壊して建て替える場合には、新たに風営法の許可が必要になるため建て替えは出来ない。そこで、このホテルは、既得権益を守るために建て替えをせず、増築を重ねてきたようです。

 経営者の方によると、消防設備や違法建築について消防局から指摘を受けた記憶はないとのことですが、これに対して消防局は2000年から連続して査察結果通知書に経営者の方の署名押印があると反論しているようですが、なんだかなぁと思ってしまいます。

 10年以上前にも歌舞伎町ビル火災事件で多くの犠牲が出たこともまだ記憶に新しく、消防法違反が注目されたことから、多くの教訓が生まれたはずです。その教訓が生かされ、適切な指導等が行われていたなら今回も違った結果になったのではないでしょうか。

 お役所によって火災直後から慌てたように各施設へ立ち入り調査がなされ、メディアを通してアピールされていましたが、何が目的なのでしょうか。高速バスツアー事故直後においても似たようなアピールがあったと思います。

 大きな事件事故が発生した直前直後において、瞬間的にアピールのための調査がなされる変化だけしかないのであれば、今後も劇的なビフォーアフターは期待出来ないかもしれませんね。

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