原発建設の関所(原発建設への首相発言)

下宮 憲二

こんにちは、広島事務所の下宮憲二です。

 「上関(かみのせき)」と聞いてどこだか分かりますか?下関はよく耳にするけど上関ってなぁと思われる方もおられると思います。現に、おとなりの山口県に上関という場所があると私が知ったのも、原発建設をめぐって反対運動が起きていると大きく報じられるようになってからです。かつて船の荷を検査する場所であった上関、中関、下関が、地名の由来とも言われています。

 先日、広島弁護士会の公害対策環境保全委員会の活動の一環として上関原発建設予定地に視察に行ってきました。弁護士会には委員会というものがあって公益的な観点からの活動を行っています。広島弁護士会では、弁護士一人あたり5つくらいの委員会に所属することになっており、私は公害対策委員会に所属しています。今年は、福島原発の事故をきっかけとして原発への関心が高まっていることから、広島市から半径100㎞圏内にある建設予定地の現状を視察することになったのです。

 上関には初めて行きましたが、瀬戸内のアドリア海(アドリア海を実際に見たことはありませんが)と言いたくなるほどのきれいな海が広がっていました。ポルコ・ロッソが「飛ばねぇ豚は、ただの豚だ。」と言いながら飛行艇で飛んできそうな雰囲気でした。そんなきれいな海を見ながら海鮮丼を頂き、海洋資源調査という名目で投げ釣りまで行いました。岸壁からのちょい投げでしたが、投げ入れてすぐにアタリがあり、型のいいベラなど参加者全員に釣果があるほどでした。

 と、観光にはもってこいの場所ですが、もちろん今回の視察はそれだけではありません。近づくにつれて原発問題の現実に引き戻されます。
 建設予定地への途中、大きな看板が現れます。そこには、幸せそうに暮らす親子が海の見える丘でなごんでいる様子が描かれていますが、「豊かな暮らしを原電とともに」と言ったキャッチコピーが書かれています。また、先へ進むと今度は黄色の下地に赤い文字で「原電を妨害する人は上関町に来ないで!町民の大多数は建設を望んでいます。それでもあなたは妨害するのですか?」と言った巨大な看板が目に飛び込んできました。これも某電力会社のやらせの一環なのかもしれない、福島原発事故後においても大多数の意見は変わっていないのだろうかと思いながらも建設予定地を目指しました。
 途中から車一台しか通れない道幅となり、「行き止まり」の看板が現れました。そこで車を降りてやぶ蚊の飛び交う獣道を進むことになったのですが、途中で道がかなり危険な状態になったためそれ以上の接近を断念しました。以前テレビで反対派の方がカヤックを使って抗議行動をされているのを見た記憶がありますが、陸路から建設予定地への接近が困難なため海路を利用されたのではないかと思います。まるで原発建設予定地が、来るものを拒んでいるかのようでした。

 そんな上関原発建設ですが、野田首相が「新規建設予定は14基あるが、新たにつくるのは現実的に困難」と発言して「新規建設」の定義が問題になっています。
 国の2010年度の電力供給計画には14基の建設が明記されており、そこには上関原発と工事の進捗率が90%を超えた島根原発3号機が含まれています。
 これを前提にすると、「新規建設」とは広く未完成の原発を含むことになり上関原発は含まれることになります。
 しかし、藤村官房長官は「新規建設」を「今から土地を手当てして、新たに建設する意味」と説明しています。これを前提にすると上関原発は用地の埋め立て工事に着手しており、「今から土地を手当てして」の解釈次第では「新規建設」に含まれないことになり得ます。

 つまり同じ言葉でもその定義次第で結論は大きく異なってきます。法律においても言葉の意味が問題になることは多く、常に言葉ひとつひとつの重みを認識させられています。 

 上関が文字通り原発建設に対しての関所となるのかは、「新規建設」の定義如何にかかっているのかもしれませんね。

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