信頼の根拠(保証債務からの離脱)
こんにちは、広島事務所の下宮憲二です。
本日、とある不動産賃貸仲介業会社が宅地建物取引業法違反を理由に業務停止処分を受けたという記事が載っていました。重要事項の説明に不備があったとして多くの苦情が寄せられていたそうです。テレビCMも頻繁に行い広い地域に展開していた業者だけに信頼して取引を行なっていた方も多いのではないでしょうか。
そこで、以前、私が知人から相談を受けた事案で思いついたのが今回のお題です。
ある知人が、賃貸借契約において賃借人の連帯保証人になっていましたが、賃借人とも疎遠になってきたので賃貸人(債権者)に頼んで連帯保証人を抜けさせてもらうことにしました。連帯保証人とは、賃借人(主債務者)とほぼ同様な形で家賃の支払義務等を負う人のことです。通常の保証人と何が異なるかというと、債権者は主債務者に対していきなり滞納家賃を請求したり、主債務者の財産がどれだけあるかを調べなくても、連帯保証人に支払いを請求できます。連帯保証人としては、まず主債務者に請求してよとか主債務者の財産から取り立ててよと言って支払を拒めないのです。
連帯保証契約を含め保証契約は、主債務者の債務が前提となっていますが、債権者と保証人との契約です。先の事例でいくと連帯保証人として責任をとらなくてよくなるためには、債権者たる賃貸人の同意が必要となります。
しかし、書面上は、確かに保証人から離脱するという旨の表題になっているのですが、文面では「債務者、保証人、連帯保証人は、~連帯保証人が本件保証契約の責任を免れることについて、以下のとおり合意する。」となっていたそうです。他に書類はもらっていないとのことです。
また、連帯保証人は、主債務者(賃借人)と合意文書を作成しており、その中身は債権者(賃貸人)と連帯保証人との間では、今後本件契約から生じる責任は負わないという内容だったそうです。
上記の事情からすると、一見して債権者に対する連帯保証人としての責任を免れたようにも見えます。
しかし、肝心の債権者たる賃貸人から連帯保証人の債務を免除するとの文言はありません。保証契約の当事者でない主債務者(賃借人)と連帯保証人の間で債務がないことを確認したとしても、債権者(賃貸人)に対しては何の法的効力も及びません。仮に、賃貸人が免除していたとしても、知人は連帯保証債務を免れていると上記書面だけで証明することは困難です。
書面上、会社の名義が記載され、保証人を離脱する旨の書類に自身が署名押印していれば、債権者に対してはもう債務を負っていないという認識となってもおかしくはありません。もしこれで、実際には保証債務を免れていないとしたら、会社の説明及び対応には非常に問題があると言えるのではないでしょうか。
争いが生じた場合に、当事者間で合意書等を作成することがあります。相手が大手業者の場合、業者を信頼して文書を作成することは多々あると思いますが、基本的に業者に不利な内容にはなっていません。署名押印を求められたら、よくよくチェックする必要があると思います。場合によっては専門家に見てもらった方がいいかもしれません。
テレビCMや会社の規模だけを信頼の根拠にするには、少し心もとないかもしれませんね。