メジャーへの道のり

蓮見 和章

 こんにちはリーガルジャパン広島事務所所長の蓮見です。

 さて、今年もプロ野球のストーブリーグが盛んになってきましたね。特に今年は、ダルビッシュ有投手をはじめ、和田毅投手や青木宣親選手、中島裕之選手や川崎宗則選手等、日本球界を代表する選手がメジャーを目指すことになり、久しぶりにメジャー移籍豊作の年になりそうです。和田投手や青木選手は、私と同世代で同じ大学の野球部出身だったのでよく神宮球場で応援していました。(当時は阪神の鳥谷選手も同じ大学の野球部でしたので今考えるととてもレベルの高い試合を見ていたんですね。)そのような選手が相次いでメジャーに行くことになると思うとなんか感慨深いものもあります。

 ただ、同じメジャー移籍でも、例えば和田投手とダルビッシュ投手では、移籍の方法が異なります。ニュースでも話題になっていますが、和田投手はFAでの移籍ですが、ダルビッシュ投手はポスティング制度を使っての移籍になります。

 FAとはフリーエージェント制度のことで、日本での一定の稼働要件を満たした選手にどの球団とも自由に移籍交渉できる権利を与える制度です。FAには日本国内の球団にのみ移籍交渉できる国内FAとメジャーの球団とも交渉できる海外FAがあり、国内FAの場合はFAの選手を獲得した球団は元の球団に人的、金銭的補償をする義務が生じる可能性がありますが、海外FAの場合そのような規定はありません。つまり、FA移籍でメジャーに行くメリットは、選手としては自由に好き名球団に行くことが可能であり、メジャーの球団にとっても日本の有望な選手を移籍金なしで獲得できるという点にあります。反対にデメリットは、選手はどんなに才能があってもFAの権利を獲得するまで一定の期間は日本のプロ野球で活躍しなければならず、選手として旬な時期にメジャーに行けない可能性があることや、日本球団からすれば一切の移籍金が入ってこないという点にあると思います。

 次にポスティングシステムですが、これは選手の海外移籍の意思を受け入れた日本球団が、メジャリーグのコミッショナーを通じてメジャー各球団に当該選手の移籍の意思と告知(ポスティング)し、その後入札により最高金額を提示したメジャー球団が日本球団との独占交渉権を得るというものです。そして球団間のやりとりで選手の移籍合意に達すれば入札額がそのまま日本球団に入るという仕組みになっています。選手は旬の時期にメジャーへ行くことが可能で、日本球団にとっても入札額という移籍金が入るというメリットがあげられますが、他方必ずしも選手の望む球団に行くことはできないことやあくまで球団間で合意がまとまらなければ選手がいくら希望してもメジャー移籍は実現しないというデメリットも存在します。

 このように互いに一長一短のある2つの制度ですが、先にあげた2投手に代表されるように、実際は2つの制度を選手・球団がその時の状況等を考慮してうまく選択しているようです。ただ、イチロー選手や松坂大輔選手、今回のダルビッシュ投手などメジャーでも即主力戦力になれるような評価の高い選手は、FAを待たずにポスティング移籍することを望み、球団もその意向を汲んでポスティング移籍を容認する傾向にあります。若くて優秀な才能はよりレベルの高いと言われるメジャーに挑戦させてあげたいという親心もあるでしょうが、それだけ即戦力であれば入札金額も高額になると言った側面もあるのだと思います。選手もお世話になった球団に高額の入札額が入ることを嬉しく思いますし、メジャーに移籍できるのならば球団はどこになろうが構わないという思いもあるみたいですね。

 現行のメジャー移籍の制度に関しては、問題点の指摘や異論も多くあるところなので今後制度は変わっていくかも知れません。ただ、どんな移籍の仕方をするにせよ、大きな夢や目標を持って、覚悟を決めて海を渡ろうとする点はどの選手も共通です。その夢を同じ日本人として応援したいですね。

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