シャア専用弁護士(自動車部品カルテル事件)

下宮 憲二

こんにちは、広島事務所の下宮憲二です。

  ○○専用という文字を見ると、ピンとくるのがシャア専用と言うのは世代を物語るのでしょうか。今でも根強い人気の白いモビルスーツアニメですが、モビルスーツ業界においてその人気は、もはや独占的状態と言っても過言ではないかもしれません。とすると、どの世代でもピンとくるかもしれません。

  先日、公正取引委員会が、独占禁止法違反(不当な取引制限)の疑いでDソーや3菱などメーカーを立ち入り検査したという記事が載っていました。公正取引委員会というのは、不公正な取引が行われていないか調査を行う独立行政委員会(内閣から独立した合議制の機関)です。公正取引委員会には、行政調査権(独禁法47条)が認められており、一般的調査や行政調査については、その実効性を担保するために調査を拒否する者に対しては刑事罰の制裁が科せられます(同法94条等)。そこで、調査対象とされた者は調査に応じることになります。
  その後、公正取引委員会が、調査によって犯則の心証を得た時は、検事総長に告発しなければならないことになっています(同法74条1項)。そうすると、今度は捜査機関による捜査が開始されることになります。独禁法に違反した人は、刑事罰が科されますから刑事責任追及のための取調べに関しては黙秘権を行使することができます。
  しかし、先の公正取引委員会の調査権によって調査に応じる場合に、自己の刑事責任に関する事項について自白してしまう可能性はあると思います。一度、自白してしまった以上前言を撤回したり、調査機関と捜査機関との取調べを明確に区別して供述するということは困難ではないでしょうか。取調べる側からしても行政調査の範囲と犯則調査の範囲を明確に分けて行うことが可能とは思えません。
  とすると、いくら公正取引委員会からの行政調査と言えども、調査対象者は弁護人の同席を要求し、同席が可能でなければ、少なくとも弁護人の助言を受けた上で調査に応じるべきだと思います。

  ここで、公正取引委員会からの調査を受ける方は、企業の役員クラスだけにとどまらず従業員の方であることもあると思います。この場合、企業に顧問弁護士がついているケースが多いことからすると、従業員の方も企業の顧問弁護士がついてくれれば安心だと思うでしょう。
  この場合、顧問弁護士は、全力で従業員の方の無罪獲得に向けて動かれると思います。なぜなら、従業員の方が独禁法に違反すると認定されれば両罰規定により企業にも5億円以下の罰金が科せられるからです(独禁法95条)。つまり、企業は自らに刑罰が科せられないように必死で従業員の方を庇うことになります。
  この点だけを考えれば、企業の顧問弁護士にすべて任せるというのも一つの選択肢かもしれません。
  しかし、企業が、不当な取引制限を行ったのは従業員が自己の営業成績等を上げるために独断で行ったことで企業の指示とは関係がない。今回の件で企業は信用の低下を含めて莫大な損害を負った。そこで、従業員に損害賠償請求をするということになったら、従業員の方は自分の身を守ることができるでしょうか。この時、企業の顧問弁護士に頼れるでしょうか。会社と従業員の方との利益が相反する可能性がある以上、当初から自分専用の弁護士が必要な気がします。

  企業の顧問弁護士は、あくまで社専用(シャァ専用)弁護士だと思っておかなければいけないかもしれませんね。

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