「リーガル・ハイ」のススメ

蓮見 和章

 こんにちは広島事務所の蓮見です。

 さて、先日のブログでご紹介した、「子どもの日記念イベント2012」ですが、多くの人に来ていただき大盛況となりました。ある弁護士によれば広島弁護士会主催のイベントの中では史上最多の入場者数ではないかとのことで、実行委員長を務めた私としては本当に嬉しい限りでした。

 何より劇に関して「面白かった。」「わかりやすかった」という声が多かった事に関しては涙がでそうな程嬉しかったです。劇の後に講演していただいた江川紹子さんも冒頭で「私が話したいことを全てわかりやすく伝えてくれた。」など、数分劇のことについて語ってくれました。もちろん、これも演じてくれた人、裏方さん、演技指導いただいた演劇部顧問の先生のおかげです。多くの人で一つのものを作り上げた時の達成感、これはなかなか本業の弁護士業務の中では味わえないものかもしれません。

 ところで、最近ドラマに関するブログを書いておりませんでしたが、別にドラマを観ていなかったわけではありません。ただ、自分が劇の脚本を書いたりしていたこともあり、なんとなくコメントを控えていました。今回は久々にドラマの話をしたいと思います。

 今クールでは、月9の「鍵のかかった部屋」、火曜9時の「リーガル・ハイ」、懐かしの僕生きシリーズ「37歳で医者になった僕」、17歳のシンガー家入レオさんの主題歌も魅力的な「カエルの王女さま」、中居正広さん主演「ATARU」等が気になっています。

 特に、「リーガル・ハイ」はその名のとおりハイテンションな弁護士を主人公の法律事務所を舞台にしたドラマなので毎回楽しみに観ています。毎回法廷シーンを含めて弁護士同士のやりとりがでてくるので、それなりに弁護士の仕事のイメージが持ちやすいドラマになっていると思います。

 このドラマ、もちろんドラマですから現実と違う部分は多くあります。例えば、法廷シーンで弁護士が法的な主張について長々と演説することはありませんし(法的な主張は書面であらかじめ提出し、法廷ではその書面を読み上げたことにして審理が進められますので、実際には自らの法的主張について長々と話しをすることはありません。)、民事の事件で第○回「公判」という言い方をすることはありません。(「公判」とは刑事事件で使う言葉です。)また前回の放送では、弁護士を交えての話し合いから、突如離婚裁判になってしまったり(実際には離婚の場合は、調停手続きというものを経ないと裁判することができません。)、弁護士からすると突っ込みどころは多々あるドラマなのは間違いないですが、それでもこのドラマ、毎回弁護士の在り方を考えさせられる結構力の入ったドラマだと思っています。

 初回は、新人弁護士の黛(新垣結衣、ガッキーは最近弁護士役が多いですね)が、頑張って弁護して無罪となり釈放された依頼者の言動から、もしかしたら自分は真犯人を社会に放ってしまったのではないかと思い悩むというシーンで終わりました。これまで観てきた多くの弁護士ドラマにはない後味の悪さが、個人的には非常に魅力を感じました。

 第2回では、売れないバンドの曲を盗作したとされる大物作曲家の話でした。裁判では依拠性(どれだけ原作品を参考にしたか)が争点になったのですが、実はこの大物作曲家はゴーストライターを多数雇っていて、そのゴーストライターの一人が盗作をしていたということが判明しました。作曲家側の弁護士は、ゴーストライターを雇っていたことを認めて、ゴーストライターが勝手にやったことだと言うよう諭したのですが、大物作曲家はこれを拒みました。「私がゴーストライターを雇っていたことになれば、私に関わる多くの人が職を失い路頭に迷うことになる。社会の歯車の中に私も組み込まれてしまっているんだよ。」真実を語ることが許されない社会の縮図が裁判にも影響した瞬間でした。

 その後の回でも、社会的地位のある男性と結婚することからそれまで好意を抱いていた別の男性をストーカーだと訴え、結局その男性が女性の言動に失望し実際にストーカーでもないのに有罪を認めてしまったストーリーや、有名人同士の離婚裁判で泥沼化していたところを、お互いの弁護士がそれぞれの有名人のイメージダウンを懸念し、正当な主張をぶつけ合いながらも和解に持っていくストーリー等がありました。

 このように、このドラマは本当に勧善懲悪ではいすっきりというドラマではありません。しかし、もやもやした解決を図ったり、社会的な背景を考えて裁判を進めるいうのは実際の弁護士業務で起こりうることです。そして、その事件の解決の仕方や裁判の進め方というのは、各弁護士の価値観、倫理観、バランス感覚によって異なってくるように思います。だからこそ、依頼者との間で考えをぶつけ合い、その上で信頼関係を構築することが弁護士としての仕事を行う第一前提になってくるのです。ドラマでは、その辺りもキャラクターを上手く押し出して、各弁護士なりの考え方が反映されているように思います。

 コメディでありながら、意外と弁護士とは何かを考えさせられる脚本、演出、これ中々レベルが高いと思います。実際劇の脚本を書いてみると、弁護士の仕事ぶりを忠実に再現するよりも、本当に伝えたい部分は残したうえでそれ以外の部分は非現実的な部分も取り入れてユーモアを持たせた方が観る方はわかりやすいし、飽きもこないということがよくわかります。ポイントは、観ている人にも「あ、これはユーモアだ」とか「これは話し盛っているでしょ」とかいうのがわかればいいと思うのです。このドラマは、一見ふざけたような設定で、弁護士の方の中には、「あんなことありえないよ」とか「あれで弁護士を語られても」という方もいらっしゃるかと思いますが、あくまでドラマだということは視聴者の皆さんもわかっていることですから、その上で弁護士を少し身近に感じて貰えればいいのではないかと思います。

 前述した初回のストーリーで、黛は「私は(弁護士として)何を信じていいのかわからない」と言いました。そして、黛はそれを見つけるために古美門の元で働くことになりました。「勝つことが全て」と言い切る古美門の元で最終的に黛の答えは出るのか、あるべき弁護士の姿勢とは何なのか。最終回まで楽しみに観ていきたいと思います。

 ちなみにこのドラマのHPでは、「リアル黛真知子を捜せ!」という実在する女性弁護士さんへのインタビュー企画もありますので、弁護士を身近に感じる意味でもご覧になってみてはいかがでしょうか。
http://www.fujitv.co.jp/b_hp/legal-high_2013/index.html

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