「やめられる・とめられる」規制(Cルビー工場視察)

下宮 憲二

こんにちは、広島事務所の下宮憲二です。

 私が、弁護士会の公害対策委員会に在籍していることは以前このブログでも触れさせて頂きました(原発建設の関所(原発建設への首相発言))。今回は、冬企画と言う事で、Cルビーの工場視察へ行って参りました。

 Cルビーと言えば、「やめられない・とまらない」で有名なえびせんをはじめ、ポテトチップスなど全国的に知名度の高い会社です。しかし、Cルビーが広島発祥の会社であることをご存知の方は少ないのではないでしょうか。私も、広島で暮らすようになるまで知りませんでした。こんな有名企業が広島に工場を持っているとなると、我が委員会としても視察しない訳にはいきません。広島のとある業界に精通している副委員長の尽力のもと、視察させて頂けることになりました。

 委員会の目的は、もちろん公害対策の在り方です。スナック工場に行けば、お菓子が食べられるなんていうよこしまな考えからでは決してありません。広島の大企業がいかに公害対策を施しているのか、IAEAの査察さながらに目を光らせていたはずですが、私は小学生になった気分でした。工場の中は、非日常の世界。わくわくしながら見ていました。例えば、作業員の方は、宇宙ステーションへの搭乗員さながらエアークリーナーによるチェックを受けます。また、えびせんが小袋に分けられる過程などは、まるでロボットが自ら意思を有しているかのようなSFさながらのシステムです。案内係の方も手慣れたもので、随所にクイズが入ります。この工場で一日に使用されるエビの量は、How much? えびせんが出来上がるまでの時間は、How long? 工場における全従業員の数は、How many? など視察する人を飽きさせないもてなしが用意されていました。

 そんな中、驚愕の事実が判明しました。なんと、あのえびせん、カリッとサクサクのあの触感を実現しているのは、油で揚げているのではなく、煎ることによってなされていたのでした。
ポテトチップスなどは油で揚げてあるのですが、えびせんをはじめとする一部の商品は揚げてありません。エビのすり身と小麦粉を混ぜたお餅のような生地を薄く延ばし、マカロニのような状態にカチカチに乾燥させてから煎られます。煎られたえびせんは、宇宙戦艦ヤマトの波動砲を彷彿させる、長さが5メートル程、直径が1メートル程ある、回転する筒の中を何本も通り、塩と油で味付けされながら出来あがってきます。そして、生まれたてサックサクのえびせんを試食させて頂きました。ホカホカで歯ごたえのある、これまで経験したことのないえびせんでした。出来たてだけにまだ塩と油が馴染んでいませんが、そのことが出来たて感をよりいっそう引き立てます。出来たてを食べる醍醐味は、視察でしか味わうことが出来ないものではないでしょうか。

 最後に、質疑応答の時間があったのですが、すかさず委員のひとりからこれだけ大量のエビを使用しているとなるとそこから生じる殻の処理はどうなっているのかという鋭い質問がありました。

 しかし、えびせんは殻ごとすり身にして製品化されているため、殻は排出されないともっともな回答がなされました。

 また、広島で生産されている製品は袋のある部分をみるとそれが揚げてあるのか煎ってあるのか一目でわかるようになっているとのこと。さらに、高級えびせんなるものがとあるデパートでしか販売されていないとのことでした。

 私は、体脂肪率をライバルのイチロー選手に近付けたいとの思いからスナック菓子は普段食べません。しかし、視察後は、ついついお店でCルビーの製品を手にするようになってしまいました。ミイラ取りがミイラになった感じです。木下代表弁護士もその魅力に魅せられているようです(勝手に選ぶ地域限定版「じゃがりこ」のお薦めランキングと大阪の美味しい「中之島ビーフサンド」)。

 たばこについては、高い税金が課せられ、パッケージには健康を害する危険性があることを表記するようになっています。ある国では、国民の健康に配慮してカロリーの高い菓子に課税されるいわゆるポテトチップス税が導入される動きがあります。そうすると、スナック菓子にもいずれ警告文の表記が義務づけられるようになるかもしれませんし、カロリーの高いスナックを大量に生産することはある意味食品公害となり得るのかもしれません。その意味で、我が委員会の視察は、非常に先見性のあるものだったと後世の歴史家は評価するかもしれません。

 「やめられない・とまらない」ほどの製品には、いつの日か、そのおいしさ故に「やめられる・とめられる」程度への規制が強いられるのかもしれませんね。

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