50ー50!憧れるのはやめましょう!?~大谷翔平選手から私たちが学べること~

蓮見 和章

 ついに今朝大谷翔平選手がシーズン50本塁打と50盗塁を同時に達成するという偉業を成し遂げましたね。前日まで本塁打が2本残っていましたので、まだ数試合先の話になるかなと思っていましたが、一気に今日の試合で51&51までいってしまいました。記録づくめの1日で達成するのはまさにスターですね。

 ところで、記録を決めた球場は、昨年のWBCで侍ジャパンが優勝を決めた球場でもあるとのこと。決勝を前にして名高いアメリカ代表の選手たちと戦う侍ジャパンのメンバーに大谷選手が発したあの明言「憧れるのはやめましょう」が生まれた球場です。

 私は、あの言葉は、大谷選手としてはチームメイトだけでなく、すべての人に対するメッセージだと勝手にとらえています。もちろん、大谷選手のような唯一無二のプロ野球選手にはなれませんが、大谷選手から私たちが学べる何かもあるのではないかとあの日以来考えるようになりました。

 ということで、今回は、弁護士の視点で、大谷選手から学べることを考えてみたいと思います。

 まず大谷選手のルールとうまく付き合ってそれを活用することに長けている点は、法律の中で生活している私たちも見習える点です。

 大谷選手は、今年盗塁数が飛躍的に伸びました。実は近年MLBでは盗塁に関わる大きなルール変更がありました。投手の塁上にいる走者への牽制球に制限が設けられたり、ピッチャーの投げる間隔の制限、ベースが大きくなるなど盗塁がしやすい方向にルール変更されたと言われています。ただ、そのようなルール変更にもかかわらず、大谷選手以外の選手の盗塁はそこまで増加していません。これはルール変更に対して、バッテリーは何とか盗塁を阻止しようと対策を練ってきているところもあるからだと思います。

 しかし、大谷選手は、投手もやっていることもあり、この点のルール改正にいち早く反応し、盗塁のスキルをさらに向上させるためにコーチと努力を重ねたそうです。「有利なルールだから簡単に盗塁できるだろう」ではなく「ルール変更されたけどそれをさらに活かせる選手になろう」という姿勢が大きな差になっているのかなと思います。

 一般生活においても、法律などのルールが変更になるとどうしても受け身に「ああこういうルールになっちゃうんだ」「こんなルールができて生きづらくなるね」などそこから対策を講じようとするのではなく、そのルールの枠に納まってしまうことを前提に考えてしまうことが多いと思いますが、ルールの中で何ができるか考えようという姿勢は私たちも大谷選手から学べることだと思います。法律を知ることで生活を変えていくことは、特にビジネスの世界では私たちにも十分可能なことだと思います。

 余談ですが、「うさぎとカメ」の話で、カメがうさぎに勝ったのは、両者では見ている世界が違っていたからだと言われることがあります。うさぎは「カメ」を見ていたけど、「カメ」はゴールを見ていたんですよね。自分の目的目標を見るのか、目の前にある「法律」や「ルール」を見て、いつの間にかそのルール違反しないことだけ考えてしまうような思考のくせを捨てて、大谷選手に学びルール(法律)の中で何ができるかという視点を持てたら、一人一人がもっと生きやすい世の中になるような気も弁護士としてしています。

 もう一つ大谷選手から学べること、むしろこちらの方が学べたら人生が変わるのではと思うのは、トラブルに遭った際のメンタリティです。

 今年大谷選手は投手ができないというトラブルを受けていますが、それよりも大きなトラブル、信頼していた人から大金を奪われた事件がシーズン開幕直後にありました。

「大谷選手はあれだけのスターで、大金も持っているから私とは違う」と思われるかもしれませんが、あれだけいつも一緒にいた人に裏切られ、「いつも一緒にいるし何でも任せてしまったのも悪いんじゃん」「もしかしたら大谷選手も違法賭博に絡んでいた?」と周囲から思われるかもしれないと疑心暗鬼になっても仕方がない環境の中で、翌日から試合に出場し続け、特に序盤から活躍して前人未到の記録をうちたてることができるのは、どんなスーパースターでも難しいと思います。

 大谷選手は自分にできることできないこと、変えられること変えられないこと、というのを日頃から考えてメンタルが安定しているからこそ、人生を変えかねないトラブルに遭っても自分にできることに集中できたのでしょう。実際、大谷選手は、トラブルを知った際にすぐに代理人や弁護士に相談して毅然とした対応を選択したそうです。動揺はしても、そこの判断を間違わないメンタリティは私たちも学びたいところです。

 弁護士からすると、早め早めに相談いただけること、ご依頼いただけることでトラブル自体被害を最小限にとどめることができるだけでなく、ご本人さんのメンタルもかなり安定すると感じることがあります。是非法律のトラブルになるかもと感じた時点で弁護士に早めに相談いただきたいです。

 いろいろ偉そうに書いてしまいましたが、私も弁護士として、ご来所いただいた相談者の方にそのような安心が与えられるように、大谷選手を見習って、どんなことが起こっても、日々自分にできることを当たり前にできるようになれる人間を目指していきたいです。 自分にできる学びをしつつ、プロ野球選手として大いに憧れてしまわずにはいられない大谷選手のこれからの活躍も楽しみにしていきたいと思います。

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