森保監督、広島凱旋!

蓮見 和章

 去る6月11日、広島市にあるエディオンピースウィング広島にてサッカー日本代表のワールドカップアジア予選シリア代表戦が行われました。広島での日本代表の試合は20年ぶりということもありましたが、日本でも珍しい街中スタジアムで、元サンフレッチェ広島の選手監督でもある森保一監督の凱旋試合ということでとても興奮する試合になったと思います。森保監督も、広島でのサッカー専用スタジアムの設立を強く望んでいた一人だったはずですので、今回は国家斉唱の際に涙を見せるなど感慨深い様子でしたね。  

 私は残念ながら観戦はできませんでしたが、帰宅がてら後半途中の時間帯にスタジアムの周りを通った際にはチケットを入手できなかった多くのサポーターがスタジアム周辺のデッキにおり、広島市民の関心度の高さを感じることができました。

 国際Aマッチということで、今回は普段のサンフレッチェの試合とは異なるルールもいくつかあったようです。スタジアム内の看板広告掲載などもそうですし、芝の長さも普段と違う国際基準で厳格に定められていたそうです。ちなみに、芝の長さが数ミリ変わるとボールの転がるスピードもかなり変わってくるそうで、当然それに合わせた戦術対応が必要になってきます。

「ルールが変われば、戦術が変わる」

 これは芝の長さに限らずスポーツの世界ではよくあることです。サッカーでも昔は公式戦の選手交代は1試合3人までというルールだったのが、コロナ禍を期に5人まで交代が認めらるようになり、試合途中の戦術変更がより容易になりました。森保監督も、先のカタールW杯では前半耐えて後半により攻撃的な選手を複数投入して逆転するという戦術で躍進しましたが、これはこのルール変更をうまく活用しているケースと言えると思います。

 ラグビーでも、昨今キックに関する大幅なルール変更があり、優秀なキッカーのキックを多用する戦術を用いるチームもでてきました。野球でもMLBでは「大谷ルール」で二刀流選手が活躍できる場が拡がりました(実際には大谷選手しか活用できていないような気もしますが)し、高校野球でもタイブレークの導入で、延長戦の戦術も変わってくると思います。

 実は、このことは私たちの暮らしにおいても同様に当てはまることがあります。法律(ルール)が変わると私たちはどこか「縛られる」「それを守らないといけなくなる」と考えがちですが、ルールが変わることでそれに合わせた新しい生活(戦術)も見えてきます。

 例えば、経営者の多くの方は、昨今の働き方改革について、どうしても会社全体の労働力が落ちてしまうことを懸念してしまいがちですが、一例として森保監督のように疲弊しないように人材を適切な場所で活用することでより効率を高めるという戦術を考えることもできるわけです。もちろん日本代表と通常の会社を一概に一緒にはできないですが、それでもルールをどう活用するかという意識の大切さは同じかなと思います。

 先ほど紹介したサッカーにおける5人交代制が導入された際、一部の識者は「このルールは切り札を多く持っているチームが有利になる。なので、戦力が充実しているチーム、選手層の厚いチームに対抗するのは今より難しくなるのでは。」と見解を示していたと記憶しています。しかし、W杯やアジア杯などの大会もしかり、日本国内のサッカー(Jリーグや昨日の天皇杯など)しかり、このルールが導入されてからいわゆる番狂わせは増えてきたようにも思います。単純に戦力の差がなくなってきたのかもしれないですが、それでもあらゆる大会ででこのような傾向がうかがえるのはやはりこのルール改正により戦術の幅が拡がったことが大きいかなと個人的には感じます。

 ちなみに、実際に5人フルに交代させなくても、ベンチにいる選手の交代可能性を相手の脳裏に残しておくというのも一つの立派な戦術だと思います。(2016年の日本シリーズ第6戦で、怪我しているはずの大谷選手がネクストバッターズサークルにいるのを見てカープの投手の制球が乱れたことがありました。当時の日本ハム栗山監督はさすが策士でした。)

「ルールに縛られるか、ルールを活用するか」

 森保監督は、今回の代表戦でより引き出しを多くするため新戦術を試みたと言われております。森保監督のことですから、5人交代というルールをいざという時の試合で最大限に活用するためにあくなき探求を続けていらっしゃるのだと思います。日常生活のルールである法律に関するサービスを提供する弁護士として、私自身も森保監督のように日々成長することを目指して研鑽していきたいなと感じた6.11でした。

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