「18歳からの大人」を生きるために~高校生と考える、自由と責任のはじまり~

蓮見 和章

こんにちは。先日、広島県立広島皆実高校で「成人になるってどういうこと?」というテーマで講演をさせていただきました。対象は高校2年生、約315名ほどの生徒さんが私の話を聞いてくれました。 

2022年、民法改正により、成人年齢が18歳に引き下げられてから3年。社会全体ではすでに定着しつつあるように見えても、高校2年生の生徒にとっては、「まだ実感がない」というのが実態のようです。だからこそ、今この時期に「18歳からの大人とは何か」を、一緒に考えることに意味があると感じており、改正前の4年前から毎年このお話をさせていただいております。

 講演ではまず、「成人」とは単に年齢の問題ではなく、「社会の形成者」としての自覚と責任を持つことだと伝えました。

世界的に見れば、18歳を成人とする国が多く、日本も国際基準に合わせた形ですが、本来の狙いは「若者に早く自立の機会を与えること」、そして「社会の形成者としての意識を育てること」にあります。 

つまり“年齢の数字”よりも、“大人として生きてく心の成長”を社会が求めているということでもあります。

次に、「18歳でできること」「20歳にならないとできないこと」を整理して説明しました。 

契約を結ぶ、結婚をする、選挙に参加する、裁判員になる。これらはすべて、自分の意思を社会に反映させる行為です。 

一方で、飲酒・喫煙・ギャンブルは20歳から。 特に強調して話をしたのが「契約」の話でした。 

18歳になると、親の同意がなくても一人で契約できるようになります。 スマホ、クレジットカード、美容エステ、賃貸契約、投資信託など、生活のあらゆる場面で「自分で決められる」自由が広がります。 しかしその自由は、同時に「守ってくれる壁がなくなる」という現実の裏返しでもあります。 

未成年には「未成年者取消権」という保護があり、軽率に結んでしまった契約を後から取り消すことができました。 けれども18歳からはその保護がなくなり、契約の責任を自分で負わなければなりません。 それが「社会に出る」ということの第一歩ということでもあります。 

このような話をすると、成人になるのが怖い、そう感じる生徒さんも少なくなかったように思います。ただ、決して一人ですべて決断し、悩み、トラブルを解決する必要はありません。

社会にはいくつかの“セーフティネット”が用意されています。 

たとえば、民法には「錯誤」「詐欺」「脅迫」によって結ばれた契約を無効・取り消しにできる規定があります。 また、消費者契約法では、事業者が不当な勧誘をしたり、消費者に一方的に不利な条項を設けた場合に契約を取り消すことができます。 さらに、訪問販売など一定の取引には「クーリング・オフ制度」があり、一定期間内であれば無条件に契約を解除できます。 

法律は、「正しい知識を持っていれば、いざという時に自分を守ることができる」という安心を与えてくれるものでもあるのです。

講演の最後には、「知識だけでなく、“姿勢”が大事です。 自分を知ること、周囲を頼ること、そして学び続けること。 それが、より良い選択をするための力になります。」  とお話しさせていただきました。

18歳という年齢は、社会に出る準備が整うというよりも、「社会の中で学び始める」スタート地点なのかもしれません。ただ、そのスタート地点に立つ前に 、学校で色んな価値観を持つ多くの人とふれあい、その中で信頼できる友を見つけるなど、人と付き合うという経験や自分の信頼できる人を見つける目が、成人してから発揮されるともいえると感じます。

講演の後、生徒さんたちから多くの感想をもらいました。 

ある生徒はこう書いていました。 

「自由には責任が伴うという言葉が心に残りました。これからは、自分の行動に責任を持ち、周囲から信頼される大人になりたいです。」 

また別の生徒は、 

「成人一年生は営業のターゲットにされやすいと聞いて、これからは“本当に必要かどうか”をしっかり考えたいと思いました。」 

と話してくれました。 

“18歳から成人”といっても、完璧な人間になれということではありません。むしろ、自分の弱さを知り、間違いを認め、そこから学び直していける存在のことなのだと思います。それは、何歳になっても同じことです。今日に学び明日をよりよく生きる。それこそが、大人である私たちが、未来ある子ども達のための社会づくりのためにできることなのかなと思います。

大人になり、自分の生き方に合わせて自由にいろいろな選択をできることは、本当に素晴らしいことです。それは、過去の多くの方が主張し勝ち取ってきた権利でもあります。生徒さんにもぜひ、徐々にではあると思いますが、大人になることの素晴らしさを実感してもらいたいと思います。

幣法人の理念は「ひとに寄り添い未来を護る」です。これから成人する多くの方の未来を護れるように。これからも弁護士として、事務所を訪れる一人ひとりと向き合っていきたいと考えています。

皆実高校の皆さん、ありがとうございました。もし、この先何か悩むことがあれば、お気軽に連絡してくださいね。是非ご自身の未来を護るために頼っていただければと思っています!

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